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勇敢なネコ・冬吉の話(長文)

2011.01.10.19:26

女房がネコ好きのせいか、これまで我が家にはいろいろなネコが同居してきました。
そのなかでも印象深いのは、今のような寒い時期に迷い込んできた冬吉です。
以下は、今は亡き冬吉の想い出のエピソ-ドです。

「冬吉とトラバサミ 」  

「大変なことに気づいたの!」と女房が突然言い出しました。
「どうしたんだ」
「冬子のことなんだけど、どうもタマタマがあるみたいなの」と女房は机の下を指差しました。
「それじゃ、冬子じゃなくて、冬吉じゃないか」と私は吹き出しながらいいました。
 冬子とは12月の初めに我が家に迷い込んできた仔ネコで、一日中今の机の下に隠れ込んで、女房がエサを与えながらようやく手なずけた4番目の飼いネコなのです。仔ネコなので雌雄の区別が分かりづらく、ようやくじゃれるようになって、それが判別できたのです。今までは、二人してメスネコと信じていました。
 オスネコと分かった時期からは、冬吉は大胆になり、エサは一番多く食べ、みるみる間に他のメスネコの体格を追い越していきました。ぐんぐん成長し、桜の季節にはたくましさを増し、近所のオスネコと喧嘩をするようになりました。
若き日の冬吉

最初は互角でしたが、ある日10時間ほどの闘争に打ち勝ち、以後どのオスネコも戦いを挑むことはなくなりました。オスネコは近寄ってきません。
 近隣の王者となった冬吉は、我が物顔に野山を闊歩するようになりました。
「冬吉が、おとといから帰ってこないんだけど……」ある日、女房が心配そうな声で切り出しました。
「オスネコだから、1週間ぐらい帰ってこないこともあるさ」と私はのんきです。
「エサの減る量が全然違うし、前来てた近所のオスネコがウロウロしてるし……」
「もう少しすれば、帰ってくるよ」と私は断言しました。
 けれども、3日過ぎ、4日過ぎても帰ってきません。5日目、6日目と我々は待ちましたが帰ってきません。
 1週間目の夜に女房がいいました。
「もう、駄目かも知れない。チップだって、タロウだって、結局帰らなくなって、どこかで死んでしまったんだから」もうあきらめた声でした。
「この周辺は、野生動物がいっぱいいるから、弱っていたらすぐやられてしまうからな」そういって私は枕元の電気を消しました。
「そうね」と暗闇の中で女房はうなづきました。
 明け方近くでしょうか。ネコ用の出入り口を潜り、階段を上がってくるネコの足音が聞こえてきました。
 ギャー、ギャーとしわがれた鳴き声が、近づいてきます。
「冬吉だ」私と女房は同時に目覚めました。冬吉は、部屋に入ってきて、女房の布団の上に寝転がり、安心した寝息を立てて、これまでと同じように眠りました。
「良かった、良かった」暗闇の中で、私たちはホッとして、再び眠りにつきました。
 朝起きて、ぎょっとしました。
 冬吉の寝ている布団は血まみれで、おまけに冬吉の前足は左右とも手首の辺りからブランブランの状態です。さらに、冬吉は腰を痛めたらしく、立ち上がることができません。

「トラバサミかも知れないな」冬吉の悲惨な姿を見て、私は直感しました。
「ワナにかかったの?」と女房は動けない冬吉をタオルでくるみ、手当を始めました。
 ミルクを与えると夢中でなめ、水分と栄養の補給を久しぶりにした様子です。おそらく、ワナにかかってそこから抜け出す格闘で、飲まず食わず、体力は消耗し、腰を痛めてしまったのでしょう。ワナからは自力で抜け出したのか、それとも誰かに助けられたのか、ともかく解放されてから夢中で我が家まで、歩いてきたに違いありません。体温も著しく上昇していました。
 冬吉は3日目に手首から先が化膿しだし、膿みがあふれ、やがて黒ずんできて、2週間もすると手先は干物のように乾燥してきました。冬吉は、ゆっくりと動くようになり、乾燥した手先は床板に当たるとカタカタと音を立てました。
「お医者さん、連れて行った方がいいかしら」
「野生児は、自然治癒を待った方が、将来がたくましく生きられるよ」と私は、直った後の姿を想像して、冬吉の適応能力に期待をかけました。
 1ヵ月も立つと、手先は分離し始めて、歩くとカスタネットのように上下します。その都度、冬吉は痛くて、ギャーギャーと泣き、立ち止まります。
 そして、ある日、ビーフジャーキーのようになった手先は、右手・左手の順にとれていきました。
 両手首のないネコ、冬吉はゆっくりと歩くようになりました。ただし、前足の先は、骨が飛び出していて、その周囲は赤くはれています。
「ちゃんと歩けるようになるかしら」女房は、冬吉に缶詰めの魚を上げながら心配そうです。
「多分、2、3ヵ月もすれば、先の部分は厚い皮が発達して、段々活発に走れるようになるよ」
 私の予想は当たりました。次第に骨が皮で覆われ、肉も盛り上がってきました。
 ただ、歩くときは痛いらしく、板の間だと軽くギャーと鳴きながら歩きますが、土の上はもう大丈夫。
 メスネコを見つけると、最近ではコンクリートの上でも駆け出してしまいますが、やはりギャーギャーと鳴きながらです。木登りも、うまくできませんが、8月に入ってからは、以前と同じように野山を駆け回っています。
手の取れた冬吉
 冬吉が、家の中で歩いているときはすぐ分かります。クッションのない前足で、トコ・トコ・トコと前進するからで、独特の音が聞こえてきます。
 時折、私の横に来て甘えるのですが、お腹を撫でながらこういいます。
「ハンディがあっても、世界一になる人もいるんだから、お前もあきらめるなよ」
 冬吉は、短い前足をバンザイさせながら、ギャーギャーと力強く鳴きました。
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